松江堂薬局の漢方でなんとかしたい!

中医学講師30年。漢方や中華圏の文化とか書きます。

杯中の蛇影 思い過ごしは病気になります(こころと漢方)

ある人が酒を飲もうとした時蛇の影が盃に映った。その人は蛇を飲み込んでしまったと思いこみそれ以後具合が悪くなってしまった、ところがある日それは盃に映った弓だということがわかり、それから病はすっかり治ってしまった。疑いの目でみているとなんでも疑わしく見えてしまうことの喩えです。

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杯中蛇影(風俗通 怪神の故事)
今でも人間ドッグの結果から自分はガンだと思い込み体調が悪くなってしまう人、検査結果が異常なしでも「自分のことは自分がよくわかっている」かたくなに結果を信じない人。いろいろな困ったちゃんがいて治療者は苦労しています。
 昔の医者たちもこのような患者さんに対応してきたようです。清代、兪震《古今医案按・諸虫》に呉球という医者のカルテが載っています。ある人が酒を飲み夜中にのどが渇いたので水瓶の水をすくって飲んだ。翌朝、その水瓶を見ると赤い小さな虫がいたので昨夜それを飲んでしまったと思い込み心配のあまり病気になってしまった。そこで呉球は赤い糸を小さく切りそれに巴豆(はず・強力な下剤)と米粒で丸剤を作り与えた。病人はすぐに下痢をしたのでその便から赤い糸を探し出し、患者は薬で虫が駆除されたと思い病気は治ってしまった。
 疑い、誤解を晴らすことを「解惑」といいますが、患者さんの疑惑を晴らし本質を明らかにすることは患者さんの精神的負担を取り除くため重要なことですが、言語を用いて説明をしても患者さんの猜疑心が強く軽々しく治療者を信じてくれない場合に、このような奇抜な滑稽な方法を用いて上手に患者さんの意を転化させて信用を得るようにしていたようです。このような医案は古代ではときどき見かけますが、今の時代ではどうでしょうか?
僕は新喜劇の舞台でしかみたことがありません。